ざっとシャワーを浴びて、プールサイドに集合する。
雫が滴る背を風がくすぐって、飛行機雲を見上げた。

空は抜けるように青く、
その空を写し込んだ牛尾邸のプールも、青く揺らめいていた。

俺、長戸淳平は、こんな豪邸に招かれるのは初めてだから、
贅を尽くしたきらびやかなロッカールームなんてのも初めてだった。
まったく、弟達にせがまれて時々行く市民プールの薄暗い小便臭い脱衣所とは、
どこもかしこも違いすぎる。
ゲスト用のそこに設えられたロッカーでさえ高級家具と言うに相応しく、
虎鉄や猪里と驚き戸惑いながら着替えた。

目の前のプールが眩いばかりに夏の光を反射している。
その煌めく水面を背に、
豪邸の主である牛尾先輩は、俺達野球部員に宣った。

「皆、わかっていると思うけど、」

牛尾先輩は、十二支高校野球部の新しい主将だ。
俺達1年坊と2年生の先輩方は学校のプール授業よろしく体育座りして、
主将の注意に耳を傾ける。

「今日、先輩方はお招きしていないのでね、」
すらりと背が高く引き締まり、
足は長く、非の打ち所のない体躯。
膝頭や足の爪までも美しく、肌も白くて綺麗だ。
その肌を隠すようにラッシュガードパーカーを着て、
目には高そうなサングラス。

「そのほうがいいだろうと思ったから、僕の一存なんだけど」
うんうん、と頷く俺達。

県予選において3年生は緒戦を落とし、十二支は今年も早々と敗退した。
キャプや蛇神さん、鹿目さんや一宮さんをベンチにも入れないって、
最初から突破する気なんてなかったんじゃないか?
そうまで思えてくる。
でも、やっと奴らが引退したんだ。
新しい頼もしいキャプテンが舵を取る新生十二支の船出は始まったばかり。
今日は所謂、進水式ってとこだろうか?
隣の虎鉄と目が合うと、ヤツもニッと笑った。

「彼らには内緒にしておかなきゃいけないってことは、皆、わかっているよね?」
再び頷く俺達。

「まさか密通を働く輩はこの中にいないと思うけど……?」
心なしか、方方から視線が刺さるような気がする。
あちらこちらの木々の茂みに潜んでいるSPからだろうと思う。

「もし、先輩方の知るところとなったら……?」
ごくり、数名は生唾を飲み込んだだろう。

「申し訳ないけど、遺書は書いてもらうようになるかな?
 ああ、書式はこちらで用意するから」
口角は上品に上がっているけど、
サングラスの奥は笑っていない。きっとそうだ。

「……冗談だけどね?」
とても冗談とは思えない。

「皆、書きたくないよね?」

「「はいッ!!」」

「わかったかな?」

「「……ッりあしたっ!!」」

「じゃあ、どうぞ、一日楽しんで」











諦めたくない










水の中ではしゃぎすぎた。
俺と虎鉄は、プールから上がって、一息ついた。
「あの海パンだよな?」
パラソルの下、デッキチェアの座り心地も上々だ。
「ん?」
「一緒に買いに行ったんだろ?」
俺が視線で促す先には、猪里がいて、
プールの縁に腰掛けて足でじゃぶじゃぶ水を跳ね上げていた。
ランチが用意されつつあるカウンターが気になっているみたいで、
視線はそちらに注がれている。
「そーだYo?」
「さすが、似合ってんじゃん」
「だろーGa」
「試着ばっかさせられたって、さっきぼやいてたけどな」
「んだYo、猪里のヤツ、口軽いNa」
「どえらい枚数って聞いたけど?」
「そうでもねーYo?……10?いや、12、3ぐらい?」
「はあ?!」
「EーじゃねーKa!好きなコの水着姿は見たいもんだRo?」
「10以上はねぇよ……それに男の水着なんて、
 女子のみたくバリエーションに富んでるワケでもねぇのに……」

「長戸ー、虎鉄ー!」
プールサイドバーの前で、
猪里が手を振ってる。
「かわEー♡」
虎鉄は頬を緩めて呟く。
「オレが選んだ水着似合ってRu!」
早くどうにかすればいいのにと思う。

「昼ごはんやってー!」

豪勢なランチをたらふく頂き、
虎鉄と俺は、空いているデッキチェアに再び座った。
野球の話、部活の話、学校での出来事、etc……
取り留めのない話に花が咲いたのは束の間だった。
野郎どもの声、水音、蝉しぐれ、
少しづつ遠くなる……
木漏れ日が閉じた瞼をちらちら刺す。
それも気にならなくなって、微睡んだ。


どれくらい眠っていたんだろう?
「なあ、」
呼びかける声に後ろを振り返ると、一宮先輩達2年生が数人立っていた。
「これ何だと思う?」
後ろの茂みに、網を張った四角い枠が二つ、
無造作に置かれているな、なんだろう?とは思っていた。

「ゴール……すっかね?」
「サッカーゴールにしては小さいよな?」
「フットサル?アイスホッケー?」
「長戸は面白いな、このプール冬は凍るのか?」
「え?さあ?」
「牛尾のことだから、凍らすんだろうな」
一宮先輩は小さく呟いた。

「Ahー、水球じゃないすKa?」

「御名答!虎鉄くん!」

「「キャプ?!」」
ゴールらしきものに気を取られ気づかなかったけど、
いつの間にかキャプが立っていた。

「水球のゴールだよ……そうだ!」
キャプは何かを閃いたらしい。
携帯を取り出し、なにか指示めいたことを口にしている。

「みんなー、集合!」
飛び込み台がそびえ立つ深いほうのプールに集められ、
あれよあれよという間に水着着用のボーイ達によってゴールが設置され、
信じられないことに、俺たちは水球をやらされるらしい。

「水球は、イギリスではウォーターポロと言ってね、意外と歴史があるんだよ?」
キャプは水球の概要やらルールを説明した。
「水の中でやるサッカーと思えばいいよ。
 あ、足は使わないからハンドボールだね」

敵味方わかるように白青色違いのキャップも用意された。
やるしかないらしい。やったことないのに。

「足腰鍛えるには良いと思うよ?あと肩も」
野球LOVEを口にして憚らないキャプだから、
今日も何かあるのでは?とは思っていた。
しかしまさか水球とは。
ボーイが最後にボールを持ってきて、キャプは笛を首にかけた。
本人は審判をやるつもりらしい。

紅白戦がスタートした。
本当は7人制らしいけど、
部員数が多いので適当に増やされ、試合時間は大幅にカットされた。

なにせ初心者だらけだ。
水球選手がプレイするように、
きれいに素早くパスが通って、胸のすくようなゴールが決まるいう訳にはいかない。
しかし、
目の前に落ちたボールまであと一掻きというところで捕られたり、
パスが通った!と思ったら奪われたり、
水中から伸び上がりゴールだ!叩き込め!と思ったら、
肩や首をホールドされて、水に沈められたり、
意外と皆本気だ。
体力の消耗が半端ない。

ピピーッ、試合終了の笛が鳴って、
散り散りにプールサイドを目指した。

「水球、マジきついっTe!溺れるっTe!」
キャップを頭から剥がしながら、虎鉄は荒い息を吐いた。
「キャプ、鬼だな。食ったもん吐きそう」
これ以上水に浸かっていたくない。
勢いをつけてプールから飛び出た。

一宮先輩は、水から這い出る気力もなさそうにプールの縁に身を預けていた。
「きっつい」
キャップを握りしめ、ぐったりと呟いた。
「大丈夫っすか?」
「ああ、長戸?……悪い」
腕を伸ばしてきた。
引き上げてくれってことらしいので、手首を掴んで引き上げた。
「すまん」
目が合う。
何かが欠けている。
「先輩、眼鏡は?」
「このゴーグル、度付きなんだよ」
彼がそれを額から抜くと、水しぶきが飛び散った。
「度付きっすか?!すげぇ!」
「別にすごくねぇよ」
「先輩、眼鏡ないと、なんか……違いますね?」
「は?」
「カッコイイ!」
「……ナマ言ってんじゃねぇよ」
先輩は俺の肩をぽんと叩いて、去って行った。

「お前何言ったんDa?一宮さん顔赤かったけDo?」
歩き去る先輩を水の中から仰ぎ見て、虎鉄は言った。
「お?何か言ったっけ?俺……?
 あ、一宮先輩のゴーグル、度付きなんだってよ、すごくねぇ?」
「へぇ……な、オレも引き上げてくれYo」
「んだよ、だらしねぇな」


元いたプールに皆で戻る。
長時間の立ち泳ぎの所為か、足取り軽くとは行かない。
「女マネがビーチバレーやって見せてくれたら、俺まだがんばれる」
1年生の誰かが呟いた。
「おお、いいなー!」
「あのユニいいよな?」
「セパレートっつったっけ?」
「ビキニだろ?」
「あれ、いいよな、ケツにモロに食い込んでて」
「しゃがんで、レシーブとかな……」
「「おおお!」」
「ばっか、あんなの着て女マネがビーチバレーやってんの見たら、
 おっ勃っちまうって」
「だよなー、申し開きできねぇわ」
「柿枝マネとか……」
「「「おおおお!」」」
「なあ、勃ったら柿枝マネに蹴ってもらえるかな?」
「「「おお、蹴られてえ!」」」
男ばっか寄ると、どうしたってエロい妄想は天井知らずになっちまう。
「な?」
隣にいる猪里の肩を抱き、顔を覗き込んだ。
「え?」
「今日女マネいなくて残念だよな?」
「え?ああ、そうやね」
逆隣には虎鉄がいて、
小さく舌打ちするのが聞こえた。
肝心の猪里は、おやつが並べられつつあるテーブルに気もそぞろみたいだけど。

おやつと言っても、
大半が本格的なアフタヌーンティーなるお茶会用のそれだった。
作法なんてさっぱりな俺たちは、
メイドさんやボーイさんが笑いを堪えている様子をちらちら気にしながら、頂いた。

腹もくちくなって、また虎鉄と適当に、
空いてるデッキチェアに座った。
「お前、猪里にあーいうの振んのやめろYo」
虎鉄はストローでコーラをすすりながら睨んだ。
コイツが言いたいことは、大体わかる。
さっきみたいな話の流れで、
猪里が好きな女の子のタイプとかぽろっと話してしまうのを、
それを聞くのを、恐れているんだ。
「あんなのしょっちゅうじゃねーか。
 あんなんでイライラしてたら、この先どうすんだよ?」
「お前は、ワザと聞いたじゃねーKa」
猪里のタイプを聞いてしまえば、
付き合える可能性は0になるだろう、
唯でさえ0に近いのに。
なんて、虎鉄は思ってるみたいだ。
でも俺は、そこまでじゃないと踏んでいる。
「もう告っちゃえばいいのによ」
「やだYo……お前、なんでそう、告れ告れ言うんだYo?!」
「えー?……俺が予想するに、うまくいきそうだから?」
「うまくいくワケねーだろGa!」
「そうか~?」
「……フられて、気まずくなっTe……」
虎鉄は物憂げに下を向いた。
「避けられTe……もうオレ、ハートブレイクもいいとこじゃねーKa!」
「決めつけんなよ」
「お前、わかってっKa?」
「?」
「同じ野球部De?男なんだZe?お前の想像力の無さには呆れるZe」
キッと睨まれる。
「虎鉄から想像力の無さを指摘される日が来るとは……」
「うるせーYo、お前、オレがフられて野球部にいるのツラくなってやめたら、
 野球部の、十二支の、損失だからNa!
 スッゲェ損失だかRa!わかってんだろーNa?!」
「……わかったよ」
「この前みたく、思わせぶりな態度もすんじゃねーZo?」
「この前?」
「有りもしねぇオレのカッコEー写真があるとか言ってYo」
「ああ、お前の位置から見えなかっただろうけど、
 猪里ホント見たそうにしてたんだぜ?」
「残念、オレは見てねーかRa」
虎鉄が梅星にカッコ良い写真撮ってもらおうかな?なんて言うから、
俺は虎鉄を引っ張って梅星を探したけど、結局会えずに有耶無耶になった。
虎鉄は「マジにとんなYo!冗談だYo!」なんて言ってたけど、おかまいなし引っ張り回した。

「お前、ホントにそれでいいの?」
「何Ga?」
「そばで見てるだけで?」
「そうするしかねーだろGa……告るんだったRa、そうだNa……」
虎鉄の視線の先には、猪里がソフトクリームサーバーを順番待ちしていた。
「卒業式とKa?」
「そんな、先……?」
二年と半年先だ、卒業は。
コイツはそんな先まで片思いを拗らせたまま過ごす気なんだろうか?
「もう顔合わせなくてEーから、心置きなく思いの丈をぶつけられるだRo?」
「お前、意外とネガティブだったんだな」
「おう、ネガティブ上等☆だZe」
「ちょっとどころか、かなりないわー」
「お前と違ってナイーブなんだYo!おまけにネガティブだShi!
 なんなら、もう、虎鉄・NN・大河って改名してもいいZe!」
「ふーん……じゃあNNくんよ……
 てか、NNってなくない?JJとかならカッコイイけど」
「知るかYo」
「卒業式って言うけどよ、それまでにお前、彼女できそうだけど?」
「オレ断ってるYo?」
「知ってるけど……猪里にもできるかもしんねーし?」
「……それは、やだNa……立ち直れない……」
「だろ?想像してみろよ、俺より想像力逞しいNNくん?」
「したくねーYo」
「猪里の彼女なら……おとなしくて小柄で可愛くて……
 猪里と同じ園芸委員の……Mさんとかな?お似合いだな?」
「だまれYo」

猪里がプールサイドを駆けて来た。
「虎鉄!」
なんだかうれしそうに虎鉄の腕をとった。
「なあなあ、」
「なに?口の周りクリームついてるZe?」
「あ、」
猪里は慌てた風に首にかけたタオルで口を拭った。
「とれた?」
「おう」
「虎鉄、ソフトクリーム食べた?」
「まだだけDo?」
「ばりうまかっちゃん!自分で作るとよ?やってみよ?」
虎鉄をデッキチェアから立たそうと、両手で引っ張っている。
「うーん、また後で食うYo」
「えー?なくなるかもしれんよ?長戸は?」
「俺も後でもらおっかな」
「二人とも!俺がおしえちゃろー思ったとに!ちょこっとコツがいるけんね?」
猪里は落ちてくるクリームを如何にきれいに巻きながらコーンに収めるか、
会得したらしき技を少し誇らしげに説明した。
「あとでおしえて言うたっちゃ、知らんけんねー?」
猪里は踵を返して、
明るく笑って、夏の光の中に飛び出して行った。

「なんなんだYo、アレはYo」
「なに?可愛いじゃねーか。なんか気にいらないことでも?」
「人の気もしらNeーで、口の周りクリームくっつけて、」
「はは……」
「腕さわってくるShi!理性がもたねーんだYo!」
「猪里はお前の気持ち知らねーんだから」
虎鉄は無言で氷だけになったグラスを見つめてる。
「わかってるYo!」
やや乱暴にサイドテーブルに置いた。
「海パン買いに行ったときYo、」
「うん?」
「昼、マック行ったんDa。
 ソースが垂れTe、アイツの口から、さっきみたいに」
「なんか……エロいな……」
「だRo?で、口の端ついてるZeって言ったけど、
 猪里反対側ぬぐったりしてSa、もどかしいんだYo、
 コッチだYo、え?こっちやろ?みたいNa」
「あー、わかる。弟に飯粒ついてんぞって言っても、あさってのほう探ってるわ!」
「HaHa、まあそんなカンジだYo……
 んで、なんか気がついたら手が伸びてて……指でぬぐってやってTa」
「猪里、何て?」
「フツーに。ありがとっTe」

指に残る猪里の唇の感触を思い出すように、
虎鉄は俯いて左の親指をいじった。
俺はもう何だか切なくて遣る瀬無くて、
でも、本人が告白はしないと言ってる以上、どうにも出来ない。
万策尽きた感があった。

「へぇ、そんで、その指どーしたん?舐めたんか?」
「お前、突っ込んでくるよNa……
 したかったけど、引かれると思ってYo」
「まぁな」
「付き合ってたRa、舐めたっておかしくねーよNa?」
「うん」
「意味ありげにこう……見つめてYo、
 舐めてやんだけどNa……付き合ってたらNa」
「そーいうのはいろいろヤッてからだろ?」
「あ?ああ、Soーだな……永久に無理じゃねーKa」
視線の先では、
猪里が、ソフトクリームサーバーに四苦八苦している一宮先輩に横から茶々を入れていた。

「オレ、どうしYo……」

「卒業まで待つんだろ?」

「……うん、待つ」

「鹿目さんと一宮さん、」
鹿目さんまでやって来て、猪里のソフトクリーム屋さんは大繁盛っぽい。

「せめて、あの二人がベンチに入ってたらな……」
虎鉄は黙って聞いている。

「俺たち、今日、こんな豪勢なプールで遊ぶことなかったかもよ?
 すっげえ、楽しいけどさ……」

「今頃スタンドで、声枯らして応援してるかも」

「だから、後悔しないように、お前は……」

「二年半は長いよ……虎鉄」

「……卒業式でふられたら、お前、そこで諦められるんか?」

「諦められっかYo……わかってるYo!」

とうとう虎鉄は頭を抱えた。
髪に両の指を突っ込んで、吐き捨てるように言った。

「……俺、言い過ぎた。悪い」

「いや、グズグズしてるオレがわりーんDa……」

「ま、気を取り直してさ、猪里のソフトクリームもらいに行こーぜ?」


「お、来たね」
「「おう」」
「こーいうのカラオケにあったけDo、やったことねぇNa、ある?」
「ねぇな」
「どうやんNo?これ引くのKa?」
虎鉄はコーンをノズル下に受け、レバーに手をかけた。
「うん、はじめから巻こうとせんごとね。最初はまっすぐ、すとんて落として」
レバーを引くとクリームが流れ落ちてきた。
「あー、ほら、手を動かすんやのーて、体低ぅして、腰と膝使うとよ」
「腰と膝?!ムズいYo!うわ、止めTe!」
「レバー戻して!」
出来上がったソフトクリームは残念なフォルムをしていた。
「ははは、ぶっさいくー!」
「うるせー、長戸もやってみろYo!」
「あはは、最初から巻かんとが良かごたるばい。真っ直ぐ落とすって言ったやろ?」
「え?なんて言っTa?」
虎鉄は目を見開いて、猪里を見つめた。
「やけん、最初っから巻かんごとね、」
「いや、その後だYo」
「ん?真っ直ぐ落とすとが良かよ?それも一瞬っちゃけど」

「……真っ直ぐ……落とす……?」

虎鉄は猪里の目を見て、反芻している。

「そう……っちゃけど?」

見つめ合ってる二人を見てると、
二人とも男なのに、不思議としっくりお似合いと見える。

「おい、垂れてんぞ」
「うわ、ヤベェ」
早くも溶け出したクリームが、虎鉄の手に流れ落ちそうだ。

「長戸、真っ直ぐ落とすんだとYo、オレは会得しTa!」

ソフトクリームを舐めながら、
虎鉄は俺に、良い笑顔を向けた。

「おー、がんばれよ」

「なん?虎鉄もう一回やると?」

「いや、やんねーYo?」

「猪里、コイツは違うことで、真 っ 直 ぐ 落とすんだよ?」

「へえ?なん?打撃?まっすぐどこに?センター?レフト?」

虎鉄と目を見合わせる。もう二人とも吹き出しそうだ。

「まあ、そのうちわかるよ!」

「え?そのうちって、なん?さっぱりわからんっちゃけど?!」

「近いうちだよ。 真 っ 直 ぐ が届くと良いよな?虎鉄?」

「そーだNa」

「今日?」

「無茶言うなYo!」

「虎鉄、ようわからんばってん、気張りぃね?」

「気張れよ!!」

俺は虎鉄の背中をバシッと叩いた。












よりぬきお題さん。