ども。

長戸淳平と申します。
十二支高校1年A組、野球部所属。
ポジションはファースト狙ってます。

聞いてくれますか?

友人Kの話です。







きみの話







コイツとは同中だったんだけど、
何の因果か高校も同じで、
部活も中学の時と同じ野球部で、腐れ縁?ってヤツです。

高校入学して、2ヶ月経って、
何だかおかしいぞ?って思ったことは、
中学の時は確か、コイツ、
彼女いなかった時期ってなかったと思うんだけど、
今は、いないらしいってこと。
てか、告られても断ってるらしい。
ウチのクラスのFさんとか、C組のSさんとか、コイツと同じクラスのE組のMさんとか、
断っちゃったらしい。何お前マジで?ってなった。正気なの?ってなった。
むかつくよねー。
中学でも、
顔はまあ良いし、明るい奴だし、野球上手いし、女の子のあしらいも上手いし、
モテててさ、
あの頃は、来るもの拒まずってスタンスだったと思うんだけどなぁ。

そんで、
俺の直感に間違いがなければの話なんだけど、
今、コイツには、好きな子はいるみたいなんだ。
それも、ウチのクラスに。
Fさん断っといて今んなって勿体なくなっちゃったとか?ってはじめは思ったんだけど、
どーも、ちがうみたいでさ。
なのになんで、ウチのクラスにいる!って思うかってーと、
休憩時間とか、コイツ、ウチのクラス来てバカ話してても、
ちらちら忙しなく横のほう見たり、
俺の肩越しに視線を彷徨わせてること多いんだよね。
んで、ふっと表情が変わる時あるんだよね。
どんな表情って、うまく言えないけど、ちょっとうれしそうな顔。
そんな時は俺も、
誰を見てんだよ?って気になって、チラとさり気に振り返ってみたりするんだけど、
コイツのタイプそうな女子はいねーんですよね。
で、
同じ野球部の友人Iに「英語の辞書貸してYo~」なんて駆け寄ってる。
何でよ、俺も辞書なら持ってっけど?ってなる。
何なんだろうね、アイツ。

でさ、今日遂に、冗談めかして聞いてやった。
「なぁ、遠いよな?」
「Ha?」
「AとE。」
「そーだNa」
「なのに、なんでわざわざ辞書借りに来んだよ。
 そんなに俺に会いてーの?」って。
「ちげーYo」
なんて笑うから、
「好きな子でもいんのかよ?」って畳み掛けたら、
一瞬、ハッとした顔した。
「別に?いねーYo?」って即答はしてたけど。

でも、その後の顔がね、何かもう、アレだったんだよ。
珍しいことに、超珍しいことに、
ちょっと切なそうだったんだよね。





どうも、長戸です。
一週間ぐらいぶりでしたっけ?

この前の友人Kの話の続きだけど、
俺、わかっちゃったかもしれない。
アイツの想い人が。

俺らまだぽやぽやの1年生だから、先輩方と同じようには部室でロッカー使わせて貰えないわけ。
片付けや雑用が済んで、3年2年の方々が着替え終わってから、
押し合いへし合いで、2人で1つの小さいロッカー共用で使ってんの。
今日も1年坊だけで、ぼやきながら着替えてて。
Kの好きなコの話してるのに、なんで部活の話になってるかって?
まあ、追い追いわかるから。

あ、ごめん、母ちゃんが飯できたって呼んでるから、また今度ね。





日が空いちゃったけど、長戸です。
部活マジしんどい。雑用とシゴキばっか。
3年生、マジ死んどけよって奴ばっか。

何の話してたっけ、
ああ、Kだったな。
いろいろと衝撃だったぜ。

部室でさ、
友人I、俺、Kって並んで着替えてたんだけど、
Kの視線は、俺を通り越して、Iのあたりを泳いでるって気づいたんだ。
Iって、クラスで自己紹介あったとき、「福岡から来ました」って言ってた、
訛りが抜けない喋り方する、パッと見ぽやーんとしてっけど、
小柄ながら背筋はピッと伸びてて、意外と骨のある奴。
で、顔みたら、「え?男?」って聞きたくなるよな可愛い顔してる。

Kはちらちら、Iの着替えを見てるっぽかった。
え?コイツ、ひょっとして……?って思って、
目の端でKの視線の先を探ってると、目が合っちまって、
ヤツは慌てた風に目を逸した。
で、俺の肩越しに、
「猪里、一緒に帰Ru?」って聞いた。
「ごめーん、今日ちょこっと寄るとこあるけん」って、
着替え終わったIがにこって笑って通り過ぎてった。
「そっKa、じゃあNa 」
なんて返しながら、
ロッカーに向き返ったアイツは、この前と同じ、
ちょっと遣る瀬ないような顔してた。

だから、俺は気づいてしまったんだ。
コイツにこんな顔させる奴が誰なのかを。

あー、携帯鳴ってるから、今日はこの辺で。

またふらっと話しに来るからさ、
そん時は聞いてやってよ。

じゃあね。










よりぬきお題さん。